恣意性

人間の無意識な行動は、心理学的に予想されるシナリオ通りに動くのだろう。
一方われわれの「自由意志」の感覚もまた、現に実感できるものとしてある。
これは心理学に基づく予想と自由意志の基づく我々の行動は、同時には成り立たない、という矛盾を示している。しかし、よく考えてみればこれらは矛盾は含んでいない。つまり、心理学は無意識に流れる向き(物理的な比喩でいえばエネルギーの低い方向)を指し示すのであって、われわれの自覚的な「自由」な行動はそれに逆らうことも当然ある。

これは、本当の意味での「自由意志」たるものがあり得るか、あり得ないのか(ちなみに私はすべてのものから独立して、振舞いうるような自由意志はないと考えている)にかかわらず成り立つことだろう。

この考察から、「自由意志」は自らの自然な心の動きを知った上で、行動できる、というあるメタ的な視点の上に成り立つものではないかと思われる。